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テニプリ・テニミュ・ガンダム・頭文字D等漫画やゲームについての感想や日々の出来事、たまーに小説等をアップしていこうと思いますw 皆様のコメントお待ちしてますw
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花闇に月の神秘さ満つる時

寂光の翳のみ残し

無音静寂 心秘めて咲き誇り散る桜よ

人心に隠れし狂い咲きの千本桜よ

月にも雲にも風にも 闇にも光にも

生きとし生ける者たち全てにも

夢という名の平穏なる世界への扉を 毎夜毎夜

春の華美しき夜に 解き放て

 

光の中に 翳の中に

はらはらと はらはらと

風に吹かれ舞を舞うように散りゆく

淡い光を宿した艶やかなる花よ

夢見草という名の通り万人にあらゆる夢幻を見せん

 


束の間の安らぎこそが幸せと知れ

凍て付く様な冬にも 寒桜

凛とした強さで堂々と先へと進めとばかりに

そっと背中を押すように 桜の花弁 風華とならん

春夏秋冬そこに在り続け 例え花枯れようと

人心 華の美麗さ記憶に留め置くことできるものならば

心の内には咲き誇る桜が 永久に在り続けよう

感情食らいて狂い咲く千本桜 

華の色は血の色か それとも淡い恋色か

 


天から零れ落つる雫は 世を嘆く桜の涙か

はらはら はらはらと

花弁を風に乗せながら 天から落つる雫とともに

時の流れ 人の愚かさ嘆くのか

咲くが誇りであるならば 人は生きる事が誇りとばかりに

励ますように どんなに時が移り変わろうと

人の側にそっと佇む

 

 

 

 

 

 

 


『桜が綺麗に咲き誇るのは、桜の木の下に死体があるからだよ』

 

 

 

そう言い始めたのは誰だったのか。

 

(―――――馬鹿馬鹿しい)

 

死体などある訳がないのに。

桜が綺麗に咲き誇る理由……あるとすれば常に何時の世も人と共に在るからだ。

 

だが……もし桜が人の死体を栄養分として吸い取るから綺麗に咲くのだとしても。

逆に夢見草の名の通り万人に様々な夢幻を見せるから綺麗に咲くのだとしても。

自分は一向に構わなかった。

 


(―――どうせなら俺の死体を桜の木の下に埋めてくれ)

 


自分の死体を糧にどの桜よりも綺麗に咲き誇る桜があったのならば。

その桜こそが自分の、自分だけの、唯一の千本桜となるのだろうと。

 


(――――――アイツに会えるのならばどんな手段だって選ばない。

もし命ある時に夢でも会えないのなら、俺の命をお前にくれてやる。

だから……だからどうか、死んで後天国でも地獄でもどこでも構わない……アイツの夢を見せてくれ)

 

 

 

 

 

 


ただ愛していた。

心から。彼の人を。もう大分遠い所へ行ってしまったが。


目を閉じればアイツの姿が浮かぶ程、アイツの姿は網膜に焼き付いているのに。

何故声を交わせないのか。

何故手が届かないのか。


美しく、儚く、朧げに咲く桜。

それは俺の見る、俺の桜ではなかった。

雪のように白く、氷のような透明さを合わせ持つ、アイツだけの、ただ唯一の桜だ。

 


何度も何度も月に、桜に願った。

夢でアイツに合わせてくれと、夢で構わないと。


なのに、それなのに。

 

 

(――――会えない、なんて……な)

 

 

 

 

 

涙が、はらはらと落ちていく。

自分の心の桜は咲き誇ったまま美しいのに、どこがアイツの桜と違うのか。

 

一日千秋の思いでアイツを自分は待っていたのに。

何故逝ってしまったのかと涙で枕を濡らす日々。

 

硝子の様に綺麗で脆く、氷の様に冴え渡ったアイツが。

異国の地で、苦しみ続け、夢へと突き進んでいたその半ばに、甘やかな夢も見せずに冷たい海の底で破滅を与えるなんて。

誰よりも厳しく、そして誰よりも優しかったアイツが。

事故で冷ややかで孤独な死を味わうなんて。

 

 

そんなの。


そんな事、俺は。

 

 


(―――――俺は耐えられない)

 

 

 

 

この世をアイツ無しで生きていける自信などもう無かった。

アイツを失くした事でこんなにも辛く悲しく苦しいのだから、自分の居場所はここではない。

この生のある者たちで賑わっている世界に居るべきでは無いのだと自覚した。

 

涙は枯れ落ち、声は擦り切れた。

脳は思い人の事を思い出し続けてオーバーフローだ。

ズキズキと鈍い痛みを発し続けている。

そして心は。

 


自分がアイツと出会って、一番大切に、壊れ物を扱うように腕の中で暖めてきた気持ちと心は。

『もう限界だ、限界だ』と壊れたステレオの様に繰り返し叫んでた。

 

 

目は霞み、身体は軋み、心は干乾びた場所を修復しようと潤いと癒しを求め。

脳は思考を拒否し始める。

 

 


視界が一面、桜、桜、桜。

白い花弁、桃色の花弁が入り混じり、風に乗ってふわりふわりと舞っている。

 

 


痛みは感じない。

苦しみも、刹那さも、悲しみも、未練も、怒りも、恨みも。

何も感じない。

 

あるのはただ、ただ平穏。

 

 

 

 

 

(――――今からお前に会いに行く。俺の命はお前があってこそのもの。

お前がいないなら俺の命は……)

 

 

 

 

いらぬ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

満月の夜、とある屋敷で一人の青年が眠るように息を引き取った。

彼の庭では桃色の桜が綺麗に咲き誇っているという。

 


机には一枚のメモ用紙に彼の走り書きがあったという。

そのメモ用紙に書いてあった事柄は……。

 

 

『俺の死体は庭の桜の下に埋めてくれ』

 

 


今まで彼の願いを叶えずにいた彼の桜は、果たして彼に甘い夢を見せたのだろうか……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【終わり】

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HN:
氷堂 蒼丕
年齢:
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誕生日:
1984/04/01
職業:
会社員、ヘルパー
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小説書くこと、音楽鑑賞、占い、ゲーム
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